コラム

たぬきの手習い

私事であるが、私が生まれた家は滋賀県長浜市の寺である。このお寺に伝わる子狸の物語が絵本となって東本願寺出版から3月に発刊された。あらすじは、この寺の僧侶・源哲さんはちょっと変わりものでお酒が大好き。子どもも大好きで、寺子屋を開いていた。子どもたちが楽しそうに集まるのを見て、近くの山の狸の子ども(豆狸・まめだ)が人間の子どもに化けて参加していた。豆狸たちは源哲さんに感謝の気持ちを伝えたくて、雨の日には代わりにお酒を買いに行くことにした。ところが酒屋の主人が雨の日にだけ酒を買いに来る子どもたちに不信を抱き、あとをつけて狸であることが突き止めてしまった。うわさが広がると、豆狸たちはもう現れなくなった。源哲さんはとても悲しんだ。

なんということはない昔話であるが、ここには大切な仏さまの願いがある。狸という異質な存在と共存できない私たちに、共に生きてくださいと呼びかけている念仏の物語だと私は考えている。

歴史や文化、肌の色や習慣が異なることで、排除の論理に傾きがちである。子どもたちには「仲良くしましょう」で済むが、大人はそうはいかない。仲良くできない「エゴ」を体一杯に抱えた「凡夫」だからだ。同じ世界に生きていながら、共に生きていながら、袂を分かち、殺し合いにまでなる。そんな凡夫である私たちだからこそ、共に生きるれる世界である浄土を欲え(ねがえ)と阿弥陀様は呼びかけているのである。できなくたっていい。でも共なる世界を諦めない。さあ、念仏申しましょう。