コラム

琉球・沖縄の仏教史を学ぶ

琉球・沖縄の仏教史を学ぶホームページを新たにし、コラム欄をつくりました。ここでは、沖縄の仏教に関連する事柄について取り上げてまいります。 初回である今回は、『琉球沖縄仏教史』(知名定寛著・榕樹書林刊2021年・4,500円+税)という書籍をご紹介します。 浄土真宗の僧侶は法事の際に基本的には「法話」をするのですが、話の後、たまに参加者からお聞きするのが「沖縄は仏教じゃなくて先祖供養なんだよ」ということです。 確かに他府県、特に仏教の伝統が色濃く残り、寺檀制度が重んじられる地域に比べると、仏教ということで僧侶を呼ぶのではなく、先祖供養の儀式執行者として僧侶が呼ばれているのが現状かもしれません。 しかし、琉球・沖縄が歴史的に仏教と縁がなかったわけではありません。このことを琉球仏教の通史として読めるのがこの書籍です。 装丁は専門書という感じが強いですが、内容は古文や漢文資料は現代語訳で紹介されており、一般書並みに読みやすくなっています。読み進めると、琉球沖縄の歴史が、仏教を視座からドラマチックに展開するようで、時代小説を読んでいるかのような部分もあります。そこには著者の大胆な推測も含まれていて、大変興味深い展開があります。 私が僧侶であるから、仏教びいきな部分を差し引いても、琉球沖縄の歴史の中で、仏教の果たした役割がたくさんあったことに驚きます。 また、後半部分には知名氏の琉球仏教研究の最新の情報も紹介されています。そこにはこの浄土真宗・東本願寺の琉球との関りが示されています。琉球王国時代にはキリスト教を合わせて禁教とされていた私たちの浄土真宗は、琉球国の併合が推し進められる中で、解禁への働きかけを強めました。「隠れ念仏」と言われた琉球の門徒が弾圧を受け一斉に処罰された事件の解決を求めて、王府との交渉にあたります。その際には明治政府との密な連携を持っていました。この間の経緯を、近年発見された日記や報告書をもとに克明に再現しています。中でも当時の僧侶らが、国王を名誉棄損で訴えるということ出来事があり、このことが事件の展開に大きく関わっているという推測がなされています。 私たちの先輩方が浄土真宗の僧侶として弾圧を受けた門徒たちの解放に動いたことも理解できますが、同時そのことが琉球処分に加担することになってしまったことも十分に注意しなければなりません。そして一方で、琉球国が禁止した浄土真宗を、なぜ多くの人々、特に女性たちが信じたのか。私にとってはそんなことを考えさせられる一冊でした。 琉球・沖縄の文化に深く根差している琉球独自の仏教の歴史が、この書籍で知ることができると思います。 (担当:長谷)  
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